東芝の西田社長

会社で購読している「日経ビジネス」の増刊号「日経ビジネスマネジメント」なる雑誌を、帰りの車中で読んでいたら、東芝の西田社長のコメントが心に強く残った。
この方は、強いリーダーシップで東芝選択と集中を加速化、原子力などで巨額な投資をする一方で、ハードディスク事業の撤退を決めるなど、辣腕経営者として有名だ。

・高度成長期、日本企業の間では、「シェアか利益か」「品質かコストか」といった議論があった。日本の市場全体が成長している時には、こうした二者択一でも通用したのだろう。しかし、現在の市場環境では、この相反する両要素をバランス良く追及していかなければ、生き残りは難しい。
・市場に存在しない新しい価値を提供できるような事業や製品を生み出すことを「バリュー・イノベーション」と定義した。泥沼の価格戦争に陥りがちなコモディティーからの脱却こそが必要になる。
・脱コモディティーの重要性を指摘したが、一方で、大多数のコモディティーでの成長も考えることが現実には必要だ。コストも品質も上げていかなければならない。この面においては、バリューイノベーションほどではないが、少しでも他社と差異化できるような「プロセス・イノベーション」が必要。
コモディティーで大事なことは、市場の声、顧客の声を反映させていくこと。その声に接する機会の多い営業の担当者は、商品の開発にまで関わる必要がある。また、不断のコストダウンや使い勝手の向上といった要求に応えるため、モノ作りの担当者が商品の設計段階にまで関わることは必須である。
・開発、モノ作り、営業という3つの部隊が連携のないまま独自のプロセス・イノベーションを行っていても、「足し算」の効果しか得られない。一方、同時並行的にプロセス・イノベーションに取り組めば「掛け算」の効果が出る。
乗数効果で留意すべきことは、「(開発の)i x (モノ作りの)i x(営業の)i」という掛け算の最後(営業)が1以上にならなければ、全体の数値が1以下になってしまうことだ。画期的な商品でも、売れなければ単なる在庫になるだけだ。同じように、各部門が1以上を担う努力をしなければ乗数効果は得られない。
・二律背反的な課題に取り組むことこそが重要で、二者択一ではイノベーションは起きない。
市場経済のコンセプトは、競争の中で成長を実現していくことにある。自分たちが競争している相手とのベンチマーキングが常に大事になる。
・さらに危機意識、「センス・オブ・アージェンシー」が必要だ。将来のベンチマーキングを、自分に厳しく、相手に甘く定期的に実行することで、今、手を打たないと追いつかれるかもしれない、さらに水をあけられるかもしれないという危機意識が生まれる。危機意識は持続させなければならない。
経営資源は限られている。成長を支えていく重要なものに、より資源の配分をする必要がある。

どの内容もこの日曜日の議論、あるいはここ数ヶ月、会社で議論してきたことの解に近づく含意がある。