創発的破壊

創発的破壊 未来をつくるイノベーション

創発的破壊 未来をつくるイノベーション


金曜日、会社近くの本屋で見つけ、好きな米倉先生の著作だったのでさっそく買って週末に読む。我々が今必要なパラダイムチェンジを、歴史的、現場的、世界的観点から概観、具体的には戦後復興、ソーシャルイノベーション、高校生教育、世界からの学び、そして明治初年度における国創りという4つの視点から考察。未来をつくるのはカリスマ的なリーダーシップではなく、個々の小さな行為の総和だとして、この想像を超えたパワーや結果を生む概念を創発的破壊と呼び、これこそが世界を変える力だとしている。ひさびさに身体中のアドレナリンが騒ぐ書であった。


戦後復興の部では、米倉先生の初期の論文から繰り返し出てくる当社創業の祖であり「日本が誇るべき技術者、経営者」である西山弥太郎の登場である。彼の「わからないからやらないのではなく、わからないからやってみるのである」、「機に臨めばまた新たな考えも出てくるというものだ」、という大きな時代観に基づいた決断力と、楽観的進取の精神が、戦後日本経済の高度成長の諸端を開く。


また、パラダイムチェンジの例として、大戦前と大戦後の3つの視点の変化が語られている。大戦前、日本がアジアに進出し、大東亜共栄圏に行き着いた前提は以下3つ。
1、日本には天然資源がない。とくに二十世紀経済を支える石油には恵まれず
2、四方を海に囲まれた耕作面積のきわめて少ない島国
3、その狭い島国に当時7500万人の人口、すぐに一億人になろうかという過剰人口


一方、前後日本は立国のあり方を以下のように設定し直していく。
1、資源がないので輸入による加工貿易立国
2、島国とは、四方に海に囲まれた海洋貿易にとって最適の立地
3、人口過剰ではなく、一億人という豊富な労働力と巨大内需


すなわち、視点を変えれば不利が有利になる、まさにパラダイムチェンジであるという。うーん、この歴史的考察は目から鱗、実に説得力がある。これを当社に当てはめるとどうなるのか。ちょうど現在、中期計画策定が始まったところ。パラダイムチェンジをキーメッセージとして、何か紡ぎ出したい。