司馬ワールド

司馬遼太郎さんの歴史著作が好きで、これまで歴史教科書に出てくるような人物を主人公にした主要作品はだいたい読んできた(義経国盗り物語、新史太閤記播磨灘物語関ヶ原、城塞、峠、功名が辻、世に棲む日日、龍馬がゆく、燃えよ剣坂の上の雲など)。主人公や周辺の人々、およびその時代の背景を興味深く活き活きと描き出し、日本や日本人の心や振る舞いの源流を考えるにとても有益であるし、とにかく読んでいて熱中するほどおもしろい。これら一連の読書が、俺の日本史の思考の血肉になっており、卑近な話では通訳案内士の日本の歴史のような試験においても、そのベース知識となっていると感じる。
そんな魅力的な司馬ワールドであるが、ほぼ唯一、主要作品且つ超大作で読んでなかった作品が以下である。

新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)

新装版 翔ぶが如く (1) (文春文庫)


日本の近代史上最重要イベントである明治維新直後の日本の政治経済社会の揺籃期を描いたもので、文庫本で10冊もある大作である。登場人物も維新の志士や元勲の大物(西郷、大久保、木戸、岩倉、伊藤、山県など)から、個性的な脇役(桐野利秋川路利良など)まで多彩だ。
この年末年始、日本現代社会の制度、システムを作ってきた明治維新後の物語を読もうと思い出し、先週から読み始めた。相変わらずのあっちいったり、こっち飛んだりのストーリー展開で、蛇足や脱線も多く、ほぼ2冊読んだが、時代的には明治6年を前後しているだけ。さすが文庫本10冊の大作と苦笑しつつ、この重層かつ奔放な司馬ワールドをじっくりまったりと楽しんでいる。