イノベーションの知恵

年末年始、『イノベーションの知恵』(野中郁次郎勝見明)を読む。
このシリーズは、『イノベーションの本質』、『イノベーションの作法』に続く3作目で、多様なイノベーション事例を、勝見氏の物語ドキュメント、野中先生の経営学的解釈で綴ったもので、実践と理論が一体となった大変面白くてためになる本として、すべて読んできた。
3作目も興味深く、9つプラスアルファの事例事業体から、変革リーダーが必要なイノベーションの知恵を以下のようにまとめている。


1.論理的に正しいかを問う理論的三段論法ではなく、実践的三段論法により、目的を明確にし、手段を考え、行動を起こし実践すること。


2.誰もが考えないような目的や目標を描くには、モノ的発想からコト的発想へ転換し、モノの向こうにコトを見ること。それには、現実を傍観者的に見るのではなく、自ら文脈のなかに入り込み、動きながら考え抜くこと。


3.組織やチーム内では名詞ベースで安定化(固定的な組織)を求めるのではなく、動詞ベースで「わたし」と「われわれ」を両立させ(場の創設)、創造性と効率性を発揮すること。


4.われわれを取り巻く環境は「知の貯水池」であり、一見、結びつかないもの同士の「見えない文脈」を見抜き、ジグソーパズルのように結びつけ、新しいコトづくりを行える力をつけること。


5.成功の偶然を必然化するには、リーダーの行動力と言語表現能力、そして強い目的意識が重要。ひとたび必然化すれば、そこに人が集まり、自己組織的に新しい知が次々生み出されていくこと。


動きながら考え抜くこと(Contemplation in Action)は、うさぎの小生にとり、キーワードになりそうだなあ。
こんな風にコンセプトを箇条書きにすると、なんのこっちゃと思うかもしれないが、これらを旭山動物園京都市堀川高校JR東日本エコキュートなどを題材に活き活きと描写する筆力、イノベーションの知恵に落とし込む構想力には毎度のことながら唸るしかない。
新しい年の初めに、比較的楽しく読めて、奥が深い書籍として、とってもお薦めです。